国家の品格

国家の品格」という本を読んだ。著者は、数学者であり、お茶の水大学教授の藤原正彦さんだ。この本は多々同感できるところがある。
まず、

  • 論理を疑うということ

筆者が指摘する点は、「論理というものは、必ずある仮定から出発する」ということだ。だから、そもそも仮定が間違っていれば、あとの思考が論理的であればあるほど、間違った結論に到達することになると述べている。まさしくその通りだと思う。ユークリッド幾何学においても、「平行線は交わらない」という仮定の上で論理が展開されるが、射影幾何のように「無限遠点で平行線が交わる」という仮定のもとの幾何学も成立するのだ。
ある知人が「私は全てを論理的に説明することができ、またそのように行動してきた」と言っていたのを聴いて、違和感を感じていたのだが、その理由は全くこの筆者の考えと同じだった。所詮はある感情を前提においての論理的帰結なはずだ。
世界の様々なところで紛争が起こっているが、それぞれ異なった前提をおいて(例えば、聖書やコーラン)、自らの行動を正当化するために論理を組み立てているのだ。
その意味で、人間は非論理的な動物であるが故に、論理にすがろうとしているのだろう。

  • 国際人の認識

筆者は、「英語ができる人が国際人ではない」と強調する。「真の国際人とは、母国語や母国の文化に精通していることが前提条件」だと述べる。その証拠にアメリカ人(当然英語を話せる)の内で、国際人といえるのは少数とのこと。
わが家でも、英語教育の話題がたまに出る。幼稚園や小学校からの英語教室があるからだ。そんなとき、私は、「幼稚園や小学生のうちは、英語をやる暇があったら、国語や算数などの基礎教育や、情緒を育てる音楽や美術などを習ったほうがいい」という。大学を卒業してから英語を勉強し、立派にビジネスレベルなひとがいるから。

  • 武士道精神の復活

武士道精神というと古くさい印象を与えるが、要は、「卑怯を憎む心」、「弱者や敗者を哀れむ心」、を大切にすることを強調している。欧米の自由・平等の考えを推し進めていくと、「万人の万人による戦い」のような状況に陥り、ますます貧富のさが広がっていくだろうと述べている。
しかし、この「卑怯を憎む心」や「弱者は敗者を哀れむ心」を論理的に教えるのは難しいと思う。筆者もこのことは認めているようであり、私も教育にひたすら論理を持ち込むのは無理だと思う。もちろん自我が育ってきたら、論理も大切だが、「頭ごなしに」教え込むという姿勢も大切なのではないかと思う。

  • 基礎学力の大切さ

筆者は、基礎学力(数学や理論物理学など)をどれだけ国家がまじめに取り組んでいるかによって、国家の底力に影響を与えると述べている。
要は、役に立たないことでも価値があるものは沢山あると言うことだと解釈しました。
最近、小中学生が株式投資のまね事を行い、ライブドア株で大損しているという記事を聴く。そもそも小中学生に株式投資をやらせる意味がわかりません。もっと、基礎的なことを勉強したら、と思う。

とまぁ、私の感想を述べてみました。まぁ、ちょっと意見が過激かもしれないけど、世の中、アメリカのスタンダードがグローバルスタンダードだと見なされて、弱肉強食の文化がはびこっている中、貴重な意見を述べた本だと思う。
おすすめです。

国家の品格 (新潮新書)

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